著者:川村元気の紹介と代表作品
1979年3月12日、神奈川県横浜市にて誕生。
【プロデュース】
2005年、26歳で映画『電車男』
2008年『デトロイト・メタル・シティ』
2010年『告白』『悪人』
2019年『天気の子』
2020年『ドラえもん のび太の新恐竜』脚本。
【小説】
2012年『世界から猫が消えたなら』
2014年『億男』
世界から猫が消えたなら
発行日:2012年10月25日
発行元:マガジンハウス
- 映画化:2016年5月14日、配給:東宝
郵便配達員として働く三十歳の僕。ちょっと映画オタク。猫とふたり暮らし。そんな僕がある日突然、脳腫瘍で余命わずかであることを宣告される。絶望的な気分で家に帰ってくると、自分とまったく同じ姿をした男が待っていた。その男は自分が悪魔だと言い、奇妙な取引を持ちかけてくる。
「この世界からひとつ何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得ることができる」
僕は生きるために、消すことを決めた。電話、映画、時計……そして、猫。
僕の命と引き換えに、世界からモノが消えていく。僕と猫と陽気な悪魔の七日間が始まった。
二〇一三年本屋大賞ノミネートの感動作が、待望の文庫化、映画化!

主人公であろう男性は『僕』といい、彼女のことを『彼女』という。
父は『父』で、母は『母』。
しかし、飼い猫には『レタス』『キャベツ』といった名前がつけられているところが面白い。
キーワードは、『何かを得るためには、何かを失わなければならない』
『僕』は、悪魔との取り引きで、『電話』を消し、1日という余命を手に入れた。さらに『映画館』を消し、『時計』を消したが、『猫』だけは消すことができず、自らの命をあきらめることにした。
死んだ母から『僕』にあてた手紙を読む。
もう私の命は、あとわずかだと思います。
だから、私が死ぬまでにしたい10のことを考えてみることにしました。
旅行に行きたい、おいしいものを食べたい、オシャレしたい…。
いろいろ書き出していくうちに、私は思いました。
私が死ぬまでにしたいことは、本当にそういうことなのかと。
それで改めてゆっくりと考えてみたら、気づいたことがありました。
私が死ぬまでにしたいことは、全部あなたのためにしたいことだったのです。
あなたの人生はこれから何年も続くでしょう。
辛いことや、悲しいこともたくさんあると思います。
だから、私はあなたがこれから生きていくうえで、辛くなったり、悲しくなったりしたときに、それでも前を向いて明日を生きていけるように、あなたの素敵なところを10個伝えておきたいと思います。
そしてこれをもって、私の、”死ぬまでにしたい10のこと”に代えさせてもらいます。
あなたの素敵なところ
あなたは人が悲しいときに、一緒に泣くことができる
あなたは人が嬉しいときに、一緒に喜ぶことができる
そのかわいらしい寝顔
笑うとできる、小さなえくぼ
不安なときに、ついつい鼻をさわってしまう、その癖
必要以上に周りに気をつかってしまう、その性格
私が風邪を引くと、いつも家事を張りきってしてくれたあなた
私が作った料理を、本当に美味しそうに食べてくれたあなた
いつもすぐに悩んで、考え込んでしまうあなた
でも悩んで、悩んで、最後には正しい答えを出すことのできるあなた
あなたの素敵なところ、これだけを忘れずに生きてください。
それさえあればあなたも幸せだし、あなたの周りの人もきっと幸せだと思うから。
いままでありがとう。そしてさようなら。
いつまでもあなたの素敵なところが、そのままでありますように。
涙があふれた。
母を失ったが、『今』永遠の母の愛情を受け取ることができた。
さらに、まだやり遂げられていないことを果すため、『キャベツ』と共に父の元へ走る。
何かパッとエンディングが見えるわけではないが、「失ってから気付いても遅いんだよ」ということを強烈に教えられた小説だった。
そういえば、
母に心から「ありがとう」ってまだ言ってないよな。
いつか言おうとは思ってるけど、もう何年も十年以上も言えてないよな。
今日の夜にでも電話しよう。
評価:8/10点
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